竹取物語 その2

竹の植物誌
タケ.ササ類とは、イネ科タケ亜科の植物のうち、稈(かん)(多年生の茎)を持つものを示す総称です。タケは木か草かという質問を受けることがあります。ふつう木と草は容易に区別することができ、植物を大きくわける時によく使われる言葉ですが、様々な定義が考えられるので、完全に区別しきれるものではありません。タケは多年生の茎を持つという点では木になりますが、茎が年々太くならない点では草になります。タケは草と木のどちらかでもないとするのがよく、ここでは専門用語なのですが、他の植物で茎または幹に当たる部分に、イネ科植物の茎を示す稈という言葉を使います。

タケ.ササ類を園芸の世界では慣習的にタケ、ササ、バンブーの三つに分けます。これらは外観や分布の違いに基づくものです。バンブーは熱帯に分布する地下茎が発達せず、稈が密生する仲間を示します。日本には野生種はありませんが、千葉県でもホウオウチクなどが鑑賞用に栽培されています。タケは、残りのタケ、ササ類のうち、一般に稈が太く、稈鞘(タケノコの皮)はすぐに落ちるものを示します。千葉県に産するタケ、ササ類のうち、マダケ属とオカメザサ属が一般にタケと呼ばれるものに含まれ、それ以外がササということになります。もっともタケらしいのはマダケ、モウソウチク、ハチクの三種でしょう。残念ながら、ササ類の中にも、タケまたはチクの付く和名を持つものがあるので、名前だけからはタケとササの区別は付きません。篠という言葉もありますが、これはササ類の中でも比較的稈が太く、高くなるもの(主にメダケ属)を示します。

写真<上から、マダケ(真竹)、モウソウチク(孟宗竹)
ハチク(破竹)>

モウソウチク(孟宗竹)

 

マダケ(真竹)

ハチク(破竹)

 

タケの一生と一斉開花
タケ、ササ類の神秘の一つに一斉開花とそれに続く一斉枯れ死が挙げられます。一斉開花が一生に一度程度の頻度の為に様々な迷信がそれについて語られています。ササ類の大量の種子生産とその後の一斉枯れ死は、山の生態系に重大な影響を及ぼします。たとえば、ネズミの大量繁殖やブナの一斉更新などです。

一つの竹やぶは営養繁殖の結果生じたクローン(一つの株)ですし、株分けで増やした竹やぶもまた一つのクローンです。通常、栽培するタケ、ササ類は株分けによって増やされていますので、一斉開花でそのほとんどの稈が枯れ死してしまします。
モウソウチクは最近1979年に開花し、結実しました。その時にできた種子から発芽したモウソウチクが大多喜町の森林公園に栽培されています。同じ株由来のタケが栽培条件の違いや稈の年齢に関わらず一斉に枯れ死することから、タケは何らかの形で、自らの年齢を記憶しているはずですが、それがどの様なものであり、どうやって一斉に開花枯れ死が起こるかは科学が進んだ現在でも依然として不明のままです。

竹の花はめったに咲かない、昔から60年とか120年目に咲くという説があったり、「竹の患い60年」という諺まである。これは東洋の思想で「10干12支」の最小公倍数から60としたものである。一方、西洋では何ごとによらず、めったに起こらないことを100年目といい、このときの60と100とは同意語です。

 

竹の稈と葉の一生
タケの寿命には、株全体の寿命とそれを構成する稈の寿命があります。株全体の寿命は数十年に及ぶものも多いのです。かなりのタケ.ササ類では開花が必ずしも枯れ死につながらないために、その場合、株全体の寿命はよくわかりません。稈の寿命はミヤコザサのようなものを除けば、数年にわたります。タケノコの形で、地上に芽をだした稈は稈鞘(タケノコの皮)の腋から枝を伸ばし、その先に数枚の葉をつけます。翌年、その枝先は枯れて、一年目の枝の腋芽から新しい枝が伸びます。一年に一度それを繰り返すことによって、枝の数は増していきます。ですから、稈の年齢は、枝分かれの回数を調べることによって知ることができます。つまり一年目は枝分かれがなく、二年目は一回、三年目は二回ということになるのです。稈や枝先の成長点の寿命は一年限りなので、稈の高さ、太さはタケノコの成長が止まった時に決まります。悍色による区別では同一竹やぶでは一年生は鮮緑色、二年生は緑色、三年生は黄緑色、四年生は黄色となっていきます。よい竹材やタケノコを得るために、手入れとして稈の生理的な寿命が来る前に古い稈を伐採する必要があります。手入れを止めた竹林は、寿命の尽きた枯れた稈が散乱し、稈の太さも不揃いで荒れ果てた感じがします。カンチク等を除くふつうのタケ.ササ類のタケノコは春に芽を出します。タケノコが成長しきって、葉が黄色くなって落ち出します。タケ.ササ類の葉の寿命はおよそ一年で、冬にも葉を付けていますが、冬を越した葉は初夏の頃に落ちます。このことを俳句の季語としては「竹の秋」と呼んでいます。(高橋)