■歴史と文化
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。竹取物語のはじめである。
小林の早春の地を散策するのは楽しい。竹の四季の移ろいを眺めるのはいいものだ。春になって竹の子の頭部が地表に顔を出す頃に竹はサラサラと枝葉を散らす。いわゆる「竹の秋」である。つもった枯葉の間からすくすくと背を伸ばした竹の子は僅か3ヶ月で20メートルの高さに達する。
梅雨を経て竹は一層生長し、竹林はもとの青々とした姿を取り戻す。酷暑の夏にはその青色が涼しげに人の心を安らげてくれ、日陰は夏をさわやかにしてくれる。竹の幹は水をたっぷりと含み、葉の隅々まで生気をもたらす。木々が紅葉する頃、竹の緑は一層その青味を増したように思え冬の木枯らしの中でも竹林は常に変わらぬ姿を見せてくれる。
いつ頃からであろうか、竹が貴重品から邪魔者扱いされるようになったのは。竹林が竹薮なりその姿は荒れて寂しい。
ここ印西も日本の経済発展、印西の開発が始まった40年ほど前から農業から離農者が出始めた。それに合わせて竹の利用頻度は下がりそれまで“山まで”の下草処理などを行う人が少なくなるにつれ山が荒れ始めその20年後には杉、松林が竹やぶに代わってしまった。現在は竹やぶが住居近くに迫り一部倉庫内にタケノコが出始めたところもあるという。
小林地区の魅力である緑の環境は“里山”環境にあり、竹は大きく影響している。温暖な気候にめぐまれて多くの竹,笹を育み数多くの竹細工、そして春の味覚の王者、筍を生み出してきた房総、北総の里そこには竹と共に暮らし、竹と共に生きる人々の歴史と文化を見ることが出来る。環境や人間社会が激しく変化する中で、急速に姿を消しつつある竹の文化、いま伝えたい竹の心を次世代に伝えたい。開発で失われた青空や豊かな緑の中で、何世紀にもわたって私達の先祖が育てて来た生活の智恵や工夫を見直す機会の参考になればと。(房総の民俗)お正月の門松にマダケを立てる。1年は門に立てるマダケに始まり、煤払いの竹笹に終わる。
箸と竹、古来から箸を使うときは礼儀は厳しく嫌い箸が戒められていました。(受け箸、移り箸、掻き箸、くわえ箸、刺箸、じか箸、空箸、立箸、違い箸、握り箸、ねぶり箸、迷い箸、寄せ箸)そして神秘的な力の恵みのお陰に感謝し、事あるごとに祭典をして神事には欠かせぬ素材として使われました。(高橋)